*** 金属製の巻き尺(メジャー) ***
今回は巻き尺(メジャー)を分解します。金属製のメジャーで、手を離すと自動的に巻き取ってくれるタイプのものです。巻き戻しをするメカニズムがどうなっているのかに特に関心があります。電池で動くわけではありませんが巻き戻すためにどんな工夫がしてあるでしょうか?
3.5mのメジャーです。100円ショップで買ってきたものです。メジャーとしての精度はどの程度のものか分かりませんが、分解して構造を知るためには良さそうです。 1. コンベックス (凸)日本ではこの種の巻き尺を「コンベックス」と呼ぶことがあります。今回分解する巻き尺にも Convex Measuring Tape と表記されています。「コンベックス」とは 真ん中が膨らんだ 「凸」の意味。コンベックス レンズと言えば、真ん中が膨らんだ 凸レンズのことです。先端を引っ張ると金属で出来たメジャーが出てきます。下の写真の様に、メジャー部分は湾曲して両側が盛り上がった形状になっています。このため、引き出しても折れ曲がらずにかなりの長さまで真っ直ぐに伸びてくれます。メジャーをこの形状にしたのは薄い金属にもかかわらずきちんと伸ばすための素晴らしい工夫だと思います。 実際には、金属製のメジャー部分が平らではなく真ん中が凹んだ弓状になっていますが、裏から見れば凸状ですので、誰かがその形状から「コンベックス」と呼んだのでしょうね。 2. 裏側に2つのネジ。巻き尺を固定すると共に、片方のネジは胸のポケット等に入れた時のクリップを固定する役割も果たしていますね。3. 2つのネジを外します。ネジは簡単に外れます。4. これで中を見ることができます。中のドラム状の部品の周りに金属製のメジャー部分が巻いてあります。黒いプラスティック製の部品はストッパーで、メジャー部分を引き出した時、勝手に巻き戻ってしまわないように巻き戻しの回転を止める働きをしているようです。 先端がメジャー部分の表面に当たり、ブレーキをかける構造になっています。 5. メジャー部分を引っ張り出してみましょう。メジャー部分を引き出すと跳びはねます。弾力性がありますので、元に戻そうとして、巻いたり、まとめたりするのは大変です。 6. 真ん中にドラム状の部品が・・・真ん中のドラム部分の中からテープ状の金属が出ているのが見えます。7. メジャー部分と巻き取り装置の接続この金属のテープ状の部品がメジャー部分の最後部に開けられた穴に差し込まれて尺と繋がっています。8. 蓋(ふた)を取り外します真ん中のドラム状の部品の上の蓋(ふた)をあけてみます。9. 「ぜんまいバネ」中にはテープ状の金属が巻かれて入っています。内側のちょっとぐちゃぐちゃの部分は真ん中のプラスティックの棒状のものに固定するための加工だと思われます。これは「ぜんまいバネ」と呼ばれるものです。ネジ巻き式の時計など、電池を使わない動力源として使われていたものと同じようなものです。ただしこの巻き尺にはネジを巻くためのハンドルはありません。 ハンドルはありませんが、メジャー部分を引っ張ると、このぜんまいバネ部分が回り、中のバネが巻かれます。巻かれることでエネルギーが蓄えられ、メジャーから手を離すと中にメジャーを巻き戻す様になっているようです。 メジャーを引っ張り出すたびに巻き戻すための力を蓄えるように工夫されています。 10. ぜんまいバネを引っ張るとい・・・ぜんまいバネを少し引っ張ると・・・。”さあ大変!” 「バン!」 とバネが飛び出し、跳ねて、くるくると丸まってしまいました。この強い弾力性がメジャーを巻き戻す力になっているのですね。11.ぜんまいバネを巻き戻すのは一苦労!
「ぜんまいバネ」をもとの巻いた形に整えるのはかなり根気のいる仕事です。跳びはねようとするバネをしっかり持って巻いていきます。もともと、巻いた状態ではこの形状に落ち着くように作られていて、メジャー部分を引っ張ると、この形からもっときつく巻くことになります。手を離すとこの形に戻ろうとしてメジャー部分を巻き戻します このような形で右側のケースに収められています。左側のプラスティック部品の真ん中の棒の切り込みに「ぜんまいバネ」の内側の先端部が差し込まれて固定され、メジャー部分が引っ張られると「ぜんまいバネ」が巻かれる構造になっています。 12. ぜんまいバネを延ばすと2.2mにもなりました。
「ぜんまいバネ」の端を固定して延ばして行くと、長さは2.2mほどありました。この巻き尺は3.5mまで測定出来るものですが、このメジャー部分を巻き取るために2.2mの長さの「ぜんまいバネ」が使われていたということになります。金属製の巻き尺(メジャー)の分解を終えて
手を離すと元に戻るメジャーは簡単な構造ですがなかなか面白いものでした。 |