トピックストップ

*** フライトシミュレーター ***

** 「リアルさの実現」 ** 
フライトシミュレーターというゲームソフトで遊んだことのある人も多いと思います。パソコンのゲームとしてはかなり長い歴史を持ったものです。私にとってこのゲームソフトは特に思い入れのあるものです。1984年に初めて出会ってからすでに20年以上の付き合いになります。この間、パソコンの技術進歩に伴いソフトウエアも大きく進化しました。私にとってパソコンとパソコンを取り巻く環境の変化はこのゲームを通して実感してきた様な気がします。

**「リアルさの実現」がパソコンの進化を実感する一つの指標? ** 
特に景色を表示するための技術(画像処理技術)の進歩には驚かされます。フライトシミュレーターは、飛行機の動きに合わせて見える景色を変えて行く必要があるわけですから、当然、コンピューターの画像処理に能力がゲームとしてのパーフォーマンスに大きく影響します。
よりリアルな景色をよりスムーズにW開するためには、ソフトの工夫と共に、パソコンの能力向上が必須の要件です。私にとっては、フライトシミュレーターでの「リアルさの実現」がパソコンの進化を実感する一つの指標となって来ました。

 フライトシミュレーターで見る カナダ バンクーバー市


<バンクーバー市の上空(Pacific Northwest Scenery)>
マイクロソフト フライトシミュレーターとしては2世代前のバージョンの「MSフライトシミュレーター98」(1998年発売? 最新のバージョンは「MSフライトシミュレーター2004」)のためのアドオンソフト「Pacific Northwest Scenery」を併せて使った時のカナダ バンクーバー上空からダウンタウン方向(北側)を見た景色です。2-3000m上空から見ると航空写真とあまり違わない様な景色が目の前に展開されます。

<多数の個人や会社がアドオン(追加ソフト)を開発&提供>
フライトシミュレーターには様々な会社や個人が作った景色を追加したり、飛行機の機種を追加したりする追加ソフト(アドオンソフト)があります。中には、実際に刻々と流されている気象データをそのまま取り込んでフライトシミュレーターの気象環境(風速、気圧など種々の天候データ)として使う様なアドオンもありますし、ネットワークで結んでバーチャルの航空会社を運営するなどという試みもあります。

<解像度5mの衛星写真を利用>
この「Pacific Northwest Scenery」というのもアドオンソフトの一つです。カナダのバンクーバーから米国オレゴン州のポートランドあたりまでのカナダ、アメリカの西海岸エリアをカバーしたもので、解像度5mの衛星写真に色を付けたもの(5m四方を一つの色の点として画像を制作)もので、極めて正確な景色が展開されます。
バンクーバーの地図と照合すると正確さがよく分かります。建物等もよく再現されていますバンクーバーはかつて数年を過ごした懐かしい街ですが、大きな建物や公園の姿を確認出来ます。

** パソコンを欲しいと思ったのはこのゲームに出会ったからかも?
実際に私がパソコンを欲しいと思ったのはこのゲームに出会ったからかもしれません(家族の非難を浴びましたが・・・)。 パソコンを使うようになる前から大型の計算機を使っての調査の集計、分析、多変量解析等で計算機のお世話になる機会はありましたし、1983年頃から仕事場で英語版でしたが「Lotus1-2-3」という表計算ソフトやワープロを使った仕事をしてはいました。しかしながら、個人用のパソコンを欲しいと思ったのはフライトシミュレーターを楽しみたいと思ったのが正直な気持ちでした。

** 1984年に初めて入手 **
今から21年前の1984年のことです。すでにIBMはパソコンを販売を開始していましたが、当時は個人で買うにはまだ敷居が高くて簡単には手が出ない時代でした。
パソコンと呼ぶと叱られるかもしれませんが、COMMODORE 64という米国やカナダで比較的普及したパソコンがありました。このパソコンのためのソフトウエアとしてフライトシミュレーターが売られており、これを入手しました。これは名前が示す様にフライトシミュレーターとしては第2世代のもので、私が入手したものはSubLogic社(フライトシミュレーターの原作者のBruce Artwickの会社)から発売されたものでした。
同じ頃、マイクロソフトはSubLogic社よりライセンスし、マイクロソフト社もフライトシミュレーターをIBMのパソコン(後にIBM-PCコンパチブルPCも含め)用に発売し、それが現在のマイクロソフトのフライトシミュレーターに続いています。

 COMMODORE 64用 Flight Simulator IIマニュアル


<Flight Simulator II>
Flight Simulator IIと名前が付けられているように、最初に開発(1979年)されたソフトよりやや進歩したもの(バージョン2に当たる)で、米国の4つのエリアで約80の空港や有名な建物や建造物、山などもごく大ざっぱですが3次元情報として盛り込まれていました。そのため、建物があるところに飛行機が突っ込めば墜落するということになりました。
ただ、現在売られているフライトシミュレーターの様に世界共通の緯度、経度、高度ベースではなく、米国を独自の升目で切った疑似的な緯度経度システムを採用していました。
現在のフライトシミュレーターは全世界を緯度、経度、高度で3次元空間としてマッピングしています。この中には世界各地の都市、や約24,000カ所もの空港他がデータとして含まれています。

<飛行理論や計器飛行についての説明付きのマニュアル>
Flight Simulator IIには、飛行機は何故飛ぶか、どうやって飛行機が目的の飛行場まで計器飛行で飛ぶかなど、非常に親切なマニュアルと実際のゲームの操作方法をまとめたマニュアルが添付されていました。

<飛行機の操縦に必要な基本的な機能はすべて備えていた>
このソフトによって展開される景色(シーナリー)はお世辞でもきれいなものとは言い難いものでした。しかしながら、飛行機のコントロールや雲、昼夜間の別、等考えられるほとんどのものがソフトの要素として用意されていました。
飛行機の動きにあわせて目に見える景色を再現するというのは確かに相当高いハードルだったと思います。しかし、基本的な原型はすでに作られており、後はパソコンの能力の向上を待つというものだったと思います。

 COMMODORE 64を納戸から引っ張り出してみました!


<これがCOMMODORE 64です>
左側のものが5インチのフロッピーディスクドライブ、パソコンの本体はキーボードと一体化されていていました。右側手前のものがジョイスティックで前後左右等の機体のコントロールを行うことが出来ました。
画面はテレビにつないだり、アナログの画像モニターにつないで見る方式でした。

<5インチのフロッピーディスク>
フライトシミュレーターで遊ぶためにはオプションとして5インチのフロッピーディスクドライブ(現在の3.5インチと違いかなり大きなもの)が必要でした。今では5インチのフロッピーディスクドライブを見ることはほとんどないでしょう。
このCOMMODORE 64に5インチのフロッピーディスクドライブを接続してフロッピーディスクドライブから景色(シーナリー)のデータ等を読み込んで遊ぶもので、ある程度の距離を飛ぶとフロッピーディスクが次のシーナリーデータを呼び込むためにドライブが回り始めるというものでした。

** 競い合うこともなく、勝ち負けもないゲーム **
パソコンゲームというと競い合い、勝負をするものが多いのですが、このゲームはその点では全く毛色の違ったゲームです。ただ忠実に飛行機の動きをシミュレートしたいということでどれだけ実物に近い動きを実現出来るかだけが問題でした。

** パソコンやソフトの技術進歩をゲームを通して体感 **
パソコンやそれに伴うソフトの技術進歩を考えて見る時、その間に出来るようになったバーチャルリアリティ(仮想現実)の歩みをこのソフトとの20年以上の付き合いで改めて実感することができました。とにかく「よりリアルな飛行を再現する」ということに努力を傾注したソフトウエアですが、パソコンとその周辺の事情を体感するのに格好の材料だったと思います。
「いい大人がパソコンゲーム?」と顔をしかめる向きもあるかもしれませんが、フライトシミュレーターゲームも立派な趣味の一つとして認知してもらってもいいのではないかと思っています。

** 日本でもパイロットの訓練に利用される状況に **
アメリカでは早い時期からこのゲームはパイロットの養成のために利用することが出来ました。日本でもこのソフトを組み込んだ操縦装置(シミュレーター)でパイロットの技能習得訓練等が出来るようになったようです。
また、個人で使うことを念頭に置いた模擬操縦装置(ソフトはマイクロソフト社のフライトシミュレーター)も5−60万円で売り出されています。よりリアルな飛行を再現するために機体の動きに併せて椅子が動くというものです。航空会社が使うような高価なフライトシミュレーターは個人で購入は不可能ですが、この種の個人向けのものは、もう少しで手が届くところまで来ているようです。

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