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見えないものを見る工夫
=顕微鏡の考案(1)=
目では見えない小さな小さな世界への興味、好奇心
「モノ」が何で出来ているかを考えるとき、目では見えないほど小さな部分がどう出来上がっているのだろうかと考えるのは当然ですね。今では原子1個の形まで見ることが出来るようになりましたが、小さな世界を見てみようとする工夫、努力は科学の発展の歴史そのものでもあるかもしれません。

誰も見たことのない世界を見たい!
新しい世界を知りたい、誰も見たことのない世界を見てみたいという興味、関心が科学技術の発展につながりました。顕微鏡の発明とその発展は見えないものを何とか見てみたいという真理を追究し、世の中の仕組みを解明したいという多くの人の努力の結果として現在に至っていると思います。

江戸時繧ノ作られた国産の木製顕微鏡。木を使って西洋の顕微鏡の構造をコピー! 

国産の顕微鏡としては最も古いものの一つ。(有)浜野顕微鏡所蔵。

江戸時代(18C末から19C初め頃)にカルペッパー型と呼ばれるの英国で考案された顕微鏡のスタイルをまねて国内で作られた貴重な顕微鏡です。レンズを除く構造が木で作られたももの。

自分たちで顕微鏡を作りたいという当時の日本人の極めて強い科学技術への興味、関心が生み出した傑作ではないかと思います。

目では見えない小さな小さな世界への興味、好奇心
2つのレンズを組み合わせれば更に大きく見える・・・顕微鏡の考案
顕微鏡は16世紀の終わり頃、オランダのヤンセン(Zacharias Jansen)が2つのレンズを組み合わせることで物が大きく見えることを発見したことから生まれたと言われています。

アマチュアの科学者が顕微鏡の世界では大きな貢献!
複数のレンズを組み合わせた顕微鏡で、17世紀後半にフック(Robert Hooke)が細胞(Cell)等の発見(Micrographia を刊行)をしました。
しかしながら、レンズの色収差や球面収差等の問題があり、倍率や精度の向上はなかなか進みませんでした。このため、皮肉にもアマチュアの科学者が考案した小さな球形レンズ一つを使った単純な顕微鏡(レーヴェンフックの顕微鏡)の方が、19世紀になって、色収差等の問題が解決されるまで、倍率が高く、よく見える顕微鏡でした。
レーヴェンフック(Leewenhoek)はオランダの人で、17世紀後半、手作りでレンズ一つを使った顕微鏡を考案し、人の赤血球、精子、単細胞のバクテリア等の発見をしました。

課題を克服、倍率も向上
その後、顕微鏡は様々な改良が加えられ大きく進歩しました。レンズそのものに由来するボケの原因(色収差や球面収差等)に対処しながら、やがて集光器(コンデンサー)の発明、種類の違うレンズの組み合わせによる収差の解消などにより、より明瞭な顕微鏡像を求め発達を続けてきました。

経験や勘ではなく光学理論による設計
レンズの色収差や球面収差の問題が解決しても、まだ完全ではありませんでした。ドイツのCarl Zeiss社にイエナ大学からアッベ(Ernst Abbe 1840-1905)が招かれ、顕微鏡の結像に関する波動理論やアッベの公式の名前で知られる正弦条件に関する式をまとめました。
アッベはそれまで顕微鏡メーカーは経験に基づいて設計をしていましたが、理論的計算に基づいて顕微鏡を設計するという方式を採用するとともに、顕微鏡の集光装置の改良、液浸法の完成、補正接眼レンズ・立体接眼レンズなどの発明など顕微鏡/光学の世界で偉大な貢献をしました。
これが結核菌やコレラ菌を発見し現代細菌学の基礎を築いたロベルト・コッホ(Robert Koch 1843-1910 ,1905年ノーベル医学賞)等の仕事に結びつきました。

光学顕微鏡は約1500倍が限界、電子顕微鏡等も登場
液浸法だけでなく、暗視野、位相差、干渉位相差などの様々な観察のための技術も考案され、より微小なものをより鮮明に観察する工夫が続けられました。
光を使っての観察では、光の波長よりも短い(小さい)ものの観察出来ません。現在では可視光線/光学式顕微鏡で見ることの出来る理論上の最大の倍率であるおよそ1500倍がすでに達成されています。
更に高い倍率で見るために、現在では光学顕微鏡に加えて電子顕微鏡等も使われています。光学顕微鏡の世界でもより質の高い画像を得るための種々の努力や、操作性を上げるための様々の工夫が現在も続けられています。

顕微鏡の世界でのノーベル賞
19世紀末には、拡大倍率に関しては可視光線を使う光学顕微鏡としての最大限に到達していましたが、観察・研究に適した顕微鏡を作るということでは種々の努力が続けられました。
1936年オランダの物理学者のゼルニケ(Flits Zernike1888-1966)がZeissと協力して位相差コントラスト顕微鏡を開発しました。この顕微鏡の開発で染色することなく生きたままの細胞を観察出来るようになりました。1953年ゼルニケはこの「位相差顕微鏡」の開発でノーベル物理学賞を受賞しています。
位相差顕微鏡だけでなく、より明確な画像が得られ、より使いやすい顕微鏡を作るため現在も種々の試みがされています。


現在の最新鋭顕微鏡 

ライカ・マイクロシステムズ(株)
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