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世界観を変えた道具 

= レンズ =

自分で磨いたレンズで、自分だけの望遠鏡を作りませんか?
当館では 『レンズ磨き教室〜自作レンズで望遠鏡作り〜』 を開催しています

 
 
 
 
<レンズを組み合わせる工夫が顕微鏡、望遠鏡を生み、世界観を変えた> 
レンズは紀元前から存在したという話はありますが、実際にいつ頃から人の手で研磨したレンズを利用出来るようになったか明らかではありません。13世紀の終わりにはイタリアでは眼鏡が使われていたようですので、この頃までには確実に人工的に加工されたレンズが作られるようになっていたのでしょう。
レンズに関して画期的な工夫がされたのは16世紀末から17世紀の初めにかけての時代です。この時代に、単一のレンズではなく、複数のレンズを組み合わせるというアイディア、工夫が生まれました。複数のレンズを組み合わせることで、単独のレンズでは成し遂げることが難しいことが出来るようになりました。これにより、私たちを取り巻くミクロ、マクロの世界に関する認識が劇的に変化するきっかけとなりました。レンズを組み合わせることで考案された顕微鏡や望遠鏡がそれまでの非常に観念的な世界観を科学的な世界観に変わるきっかけになりました。
レンズはシンプルな道具ですが、世界観を変えた画期的な道具なのです。
 
<天上(宇宙)を支配する原理と地上を支配する原理は別のものと考えられていた>
ヨーロッパにおいては16世紀末/17世紀初め頃までの我々を取り巻く世界・事物についての認識は極めて観念的なものでした。天上を支配する原理と地上を支配する原理は別のものであり、宇宙は地上の原理が適用出来ない世界と考えられていました。天上は高貴で不変、完全無欠の世界と考えられていました。しかしガリレオが自作の望遠鏡で観測した太陽にはシミのような黒点がありました。完全な球だと考えられていた月には、起伏に富んだ山や谷があり、金星は月のように満ち欠けをするということが明らかになったのです。
このような発見はそれまでの観念的ネ世界観に深い疑問を投げかけるものでした。このような望遠鏡による科学的な天体の観測がガリレオに地動説の正しさを確信させることになりました。
 
<ガリレオは望遠鏡の考案者ではありませんが・・・>
ガリレオは望遠鏡の発明者ではありません。1608年にオランダで望遠鏡が考案されたという話を聞いて自分でも望遠鏡を作ることを思い立ち、望遠鏡を作りました。その望遠鏡を使って、1609年には望遠鏡を空に向け、望遠鏡による人類初の天体観測を始めました。
ガリレオは、初めて作った自作の望遠鏡をベネチアの有力者に披露した後、わずか7ヶ月間に60台以上の望遠鏡を製作したそうです (ガリレオの1610年初めの手紙。”Telescope of Galileo”, Viencenzo Greco, Giuseppe molesini, and Franco Quercioli   Nov,1993 Vol.32,No31 APPLIED OPTICS)。彼は多くの望遠鏡を製作しましたが、本当に使えるものはほんのわずかだったそうです。レンズを購入し製作した望遠鏡の内、性能のよいものを選び、他の大部分は売却してしまいました。レンズを購入して望遠鏡を作るとともに、ガリレオは、自分でもレンズ研磨のための道具を使ってレンズを作りました。
 
<ガリレオ望遠鏡の復元(レプリカ)>
ガリレオが作った望遠鏡として確認されているものはイタリアのフィレンツェのガリレオ博物館」が所蔵する2本だけです。当館ではその内の1本、長さが1.3mもある長い方の望遠鏡のレプリカを製作しました。
レンズの曲率、焦点距離や木製の鏡胴、収差を少なくするためにレンズにかぶせるアパーチャーまで忠実に再現し、ガリレオが実際に覗いたのと同じ様に見えるように再現しました。
 
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<ガリレオの初の天体観測から400周年を記念し、2009年は「世界天文年」>
2009年はイタリアの科学者ガリレオ・ガリレイが望遠鏡を天空に向け、宇宙への扉を開き始めた1609年から、ちょうど400年目の節目でした。これを記念して2009年は『世界天文年2009』と定められました。天文学や科学に関する行事が世界中で開催されました。
科学的な観測結果を重視したガリレオの主張の展開は、宗教裁判を経て、彼を終生軟禁状態に置くことにつながりました。しかしながらシンプルな道具、レンズを組み合わせることで考案された顕微鏡、望遠鏡、それらを使った先人が果たしてきた役割は偉大です。
その後、先人の多大な努力により我々を取り巻く世界観は大きく変わりました。現在では、はるか130億光年かなたの宇宙の観測結果も得られることになりましたし、ミクロの世界では究極の素粒子に迫り、ミクロからマクロまで共通の科学原理で世界を理解する試みが続けられています。
「世界観を変えた道具 レンズ」・・・、観念的な世界観から科学的な世界観への転換のきっかけとなったレンズについてあらためてその役割を考えてみませんか?

 

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<レンズ磨きにチャレンジ>

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ガリレオが400年前に自分の望遠鏡を作るためにレンズを作ることができたのですから、物質的にはるかに恵まれた我々が自分でレンズを研磨できないはずがありません。レンズ作りにチャレンジしてみましょう!

レンズの研磨
 
レンズは、研磨皿と呼ばれるレンズと反対の曲率を持った「研磨皿」とガラス素材を摺り合わせることで作られます。この方式は基本的に400年前も今日も同じです。現在はモーターによる動力やコンプレッサーによる圧縮空気等も利用できますので、高品質のレンズを短時間で製作することが出来ます。
宇宙科学館ではレンズ磨き教室を開催するため、レンズ研磨機を導入いたしました。導入した装置は「砂かけ機」と呼ばれる粗成型レンズを作るための装置と「(仕上げ)研磨機」と呼ばれる仕上げ研磨を行うための装置です。
これらの装置を使ってレンズを研磨し、望遠鏡に組み上げるという「レンズ磨き教室」を開催しています。自分で研磨したレンズを使ったマイ望遠鏡を持つことは素敵なことだと思いませんか?
 
仕上げ研磨.JPG - 49,869BYTES
 

ガラス素材からレンズ

レンズを作るには透明度が高く内部に気泡やムラのない均質な屈折率を持った質の高い光学ガラス素材が必要です。高温で溶融した光学ガラス材料を金型に溶かし入れてプレスすることでガラス素材が作られます。
この段階では両面共に平面で、表面はスリガラス状です(写真左)。粗成形の段階では、ガラス素材をカーブジェネレーターというダイヤモンドの刃を持った装置でほぼレンズの形に整えます。この段階でも表面はスリガラス状です(写真中央)。粗成形にしたものを研磨材の粒径を変えて何段階かの研磨をし、傷のないレンズに仕上げます(写真右)。
 
ガラス素材からレンズへ.JPG - 90,131BYTES
 
 
研磨機

当館で使う研磨装置は2台。研磨行程に応じて使い分けます。研磨材も目の粗い「酸化アルミニウム」と目の細かい「酸化セリウム」の2種類。 研磨行程で目の粗い研磨材が仕上げ用の行程に入り込むとレンズに傷がつくことから、同じような研磨機ですが「砂かけ機」と「(仕上げ)研磨機」と区別して別の装置を使って研磨作業を行ないます。下の写真は「(仕上げ)研磨機」です。

仕上げ研磨機.JPG - 194,947BYTES

 
研磨に必要となる研磨皿やレンズホルダー等
 
レンズの曲面は、研磨皿とガラス素材を摺り合わせることで作られます。凹状の研磨皿とガラス素材を摺り合わせると凸状のレンズが出来、凸状の研磨皿とガラス素材を摺り合わせると凹レンズが作られます。 何段階かの研磨行程を経ててレンズは作られますが、その行程に応じて複数の研磨皿が必要です。

研磨皿等.JPG - 110,252BYTES

 

レンズ磨き教室では ガリレオ式の望遠鏡を製作

レンズ磨き教室では、対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使ってガリレオ式6.2倍の望遠鏡を製作します。また、教材用として、ご要望に応じてフローレンス科学史博物館所蔵のガリレオの望遠鏡のレンズ仕様にあわせたレンズを作り、ガリレオ望遠鏡のレプリカ(長さ約1.3m、倍率14倍)を作ることも出来ます。
下の写真の上側の長い望遠鏡がガリレオの望遠鏡のレンズ仕様にあわせた14倍の望遠鏡です。下の短い方が「レンズ磨き教室」で製作する6.2倍の望遠鏡です。
上側のガリレオ仕様の望遠鏡のレンズは、このページの上の方の写真に示した木製の鏡胴にセットすれば、レンズの仕様だけでなく、外観も含めて極めて精巧なガリレオ望遠鏡のレプリカになります。

完成した望遠鏡.JPG - 89,150BYTES

 

● ガリレオ式望遠鏡/ケプラー式望遠鏡 ●


1609年にガリレオが製作した望遠鏡は、対物レンズに凸レンズ、接眼レンズに凹レンズを使った方式の望遠鏡です。上下が逆さまになることはありませんので、見たときに混乱は起こりませんが、視野はあまり広くありません。ガリレオが作った望遠鏡の見え方は、ちょうど、5円玉を持って腕を伸ばし、5円玉の穴の中から拡大像を見るような雰囲気です。望遠鏡で見る対象物を視野にとらえることがかなり大変です。

ケプラーはガリレオから数年遅れてケプラー式の望遠鏡の設計を発表しました(彼は自分で望遠鏡は作りませんでした)。対物レンズ、接眼レンズの両方に凸レンズを使った望遠鏡です。視野が狭くならないという利点はありますが見える像は倒立像です。天体望遠鏡では上下はあまり問題ではないため、レンズを使った天体望遠鏡にはこの方式が多く使われています。